「もう帰るよ!」と声をかけた途端、子どもが「やだー!まだ遊びたいー!」と泣き出して、公園から帰れない…。
どうしようかと途方に暮れて、周りの視線も気になり、焦ってどうにかしてなだめようとすればするほど、うまくいかないものです。
こうした子育ての悩みは尽きません。
私も保育士になりたての頃、もうお昼ご飯の時間になったけれど、「まだ遊ぶ!」と叫ぶ子どもに、どうすればいいものか…と日々悩んでいました。
そんな時は、まず子どもと一緒に「約束」をしてみます。
「じゃあ、あと何回滑り台したら帰る?」
「…あと、5回にする」
このように、子どもと約束を交わすことは、子ども自身が遊びの終わりを自分で決めたという納得感につながり、心の準備をさせるための良い方法の1つです。
もちろん、それで上手くいけば万々歳。
でも、それでも子どもが泣き止まない時、どうすればいいのでしょうか?大抵、そんなに上手くはいきませんよね。
子どもは遊びに夢中になって約束を忘れてしまったり、「もう一回だけ!」という気持ちが抑えられなくなったりして、結局泣き出してしまうこともあります。
「約束は何だったんだ…」と、私たちはがっかりしてしまいますが、この「まだ遊びたい!」という声は、ただのわがままではありません。
これは、子どもが自分の気持ちを思いっきり表現している、成長にとって大切な瞬間です。
この記事では、そんな公園の帰り道に使える、保育士ならではの言葉かけのヒントをご紹介します。
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「なぜ?」理由を一緒に考える

「さっき、約束したでしょ!」
つい、そう言ってしまいがちですが、これだけでは子どもは納得できません。
「なぜそうするのか」という理由が分からないからです。子どもはただルールに従うのではなく、「どうしてもう帰らなきゃいけないの?」と不満を持っている、帰らなくては行けない理由に納得がいかないのかもしれません。
そこで試してほしいのが、約束をするときに、その理由も一緒に考えるということです。
たとえば、こんな声かけはどうでしょう。
「まだ遊ぶ!」
「じゃあ、あと滑り台を何回滑ったら帰る?」
「…あと3回」
「分かった。3回滑ったら帰ろうね。おうちに帰ったら、何しようか。一緒に絵本を読む?それとも、一緒にご飯を作る?」
「絵本!」
この声かけで狙っていることは、「公園で遊んだ後にも、楽しいことがある」ということ、これから先の見通しを子どもに伝えることです。
「あと3回滑ったら帰る」という約束の先に、「家に帰って絵本を読むため」という新たな楽しみを提示することで、子どもは帰ることに納得感を持ちやすくなります。
このような言葉かけがなぜ有効なのか、ダナ・サスキンドさんの『3000万語の格差』という本に詳しく解説されています。
この本によると、子どもは一方的に「やりなさい」と命令されるより、理由を教えてもらった方が、自分で考えて行動する力が育つことがわかっています。
(例えば、単に「靴を履いて!」ではなく、「今からお外に行くよ。だから靴を履いてね。靴を履かないと、足を怪我してしまうかもしれないからね」と何故それをしなくてはならないのかを言葉にして伝える。
この「自分で考えて行動する力」は、子どもの自律性、つまり自分で自分をコントロールする力にもつながります。
ただ命令するのではなく、子どもの「どうして?」という疑問に答える言葉かけを意識すること。また、どうしてそれをしなくてはいけないんだろう?と理由を一緒に考えてみること。
この習慣が、子どもの心の成長を促すのではないかな、と思います。
子どもの気持ちを代弁する
それでも、「やだー!!」と泣き止まない時もありますよね。
どう頑張っても上手くいかない時、もう!どうすればいいんだ!と本当に困ってしまいますが、一度自分自身も落ち着いて、子どもの気持ちを言葉で代弁してみましょう。
「もっと遊びたかったんだね。まだ帰りたくなくて、悲しい気持ちなんだね」
子どもの心の中は、まだ言葉にできない感情でいっぱいです。だから、モヤモヤした気持ちを、泣くことでしか表現できないことがあるのです。
レベッカ・ローランドさんの、『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』という本でも述べられているように、子どもの気持ちを言葉にすることで、子どもは「これが“悲しい”っていう気持ちなんだ」と、少しずつ自分の感情に名前をつけられるようになり、感情をコントロールする力を身につけていきます。
そのようにして、自分の感情を誰かが受け止めてくれる経験が、子どもに深い安心感を与え、相手との信頼関係を築く一歩に繋がります。
怒りや悲しみといったネガティブな感情も含め、子どものすべての気持ちを「そうだね、そう思うよね」と受け止めること。
これも、子どもの心を育てる上でとても大切なことの1つです。
こうした言葉かけは、子どもに「自分の気持ちをわかってもらえた」という経験を与え、自己肯定感を高めていくことにもつながります。
失敗を学びに変える言葉かけ
約束を守れなかった子どもは、「お母さんを怒らせてしまった」「自分はダメな子だ」と、自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。
こうしたネガティブな感情が、子どもを「どうせダメなんだ」と諦めてしまう気持ちにさせてしまうことがあります。
そこで大切なのは、約束を守れなかったことを「失敗」と捉えずに、「どうしたら次はうまくいくかな?」と前向きに考えられるようにサポートすることです。
先述した、ダナ・サスキンドさんの『3000万語の格差』という本では、子どもの心の状態を「成長の心の枠組み」と「固定の心の枠組み」という2つに分けて説明しています。
◉固定の心の枠組み
:「どうせ自分にはできない」と、能力は変わらないものだと考える。
◉ 成長の心の枠組み
:「頑張ればもっと良くなれる」と、努力で能力は伸びると考える。
子どもが約束を守れなかった時、「ダメだった、やっぱり私はダメなんだ」と固定の心の枠組みに陥らないよう、こんな言葉かけをしてみてください。
「お約束を守るのが難しかったね。でも、帰ろうと頑張った気持ちはわかっているよ。じゃあ、どうしたら次はお約束を守れそうかな?一緒に考えてみようか」
このように問いかけることで、子どもは「失敗」を「もう終わりだ」と捉えるのではなく、「どうしたら次はうまくいくかな?」と次への挑戦に繋げて考えることができます。
この経験こそが、失敗を恐れず、また挑戦する「やり抜く力」を育むことにつながるのです。

おわりに
「まだ遊びたい!」と泣く子どもの言葉は、子どもが自分を表現し、成長するための大切な経験の1つです。
毎回毎回勘弁してよ~!と思う気持ちもとても理解できますが、子どもは1回だけの経験で大きくは変わりません。
何度も何度も同じ事を繰り返す中で、少しずつ気持ちを理解したり、自分の感情のコントロール方法を学んだりしながら、変化、成長していくのです。
公園でのたった数分間のやりとりが、子どもの一生を支える「心の根っこ」を少しずつ、少しずつ太くしていく。
そう考えて、私たちも諦めずに粘り強く、子どもと関わっていきたいですね😌
子育ては毎日が試行錯誤の連続ですが、この記事が、少しでも皆さんの子育ての助けになれば幸いです。
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【参考文献】
◉『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』
著:ダナ・サスキンド
訳:掛札逸美
出版社:明石書店
出版年:2018年
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◉『自分でできる子に育つ最高の言葉かけ』
著: レベッカ・ローランド
訳:木村千里
出版社:SBクリエイティブ
出版年:2022年
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